暮らしの種まき

#1:樺細工

Tohoku Local Walk -ゆるり東北-
Report 1:角館にしかない素敵な樺細工(2018年4月5日)

こんにちは、風景屋です。
仙台にもいよいよ春が到来し、新緑の季節となりました。

さて、先日秋田県は仙北市にあります角館に行ってきました。角館はまだ桜が咲くほど暖かくはなく(むしろこの日は寒い日で、更に北の青森では雪だったらしい)、道路脇や畑にはまだまだ雪が残っていました。地元の方の感覚だとあと2週間ほどで桜が開花するのではないかという時期。角館に流れる桧木内川(ひのきないがわ)の川沿いは桜の名所なので、やや早すぎる訪問で残念でしたが、その分人が少なくゆっくりできて良かったです。

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今日は、日本で(世界で)角館にしかないという、伝統工芸「樺細工(かばざいく)」についてお伝えします。

角館の武家屋敷エリアにある角館樺細工伝承館に行ってきました。当日実演の当番をされていた伝統工芸士の方がわりとシャイな方で謙遜されてしまい、残念ながらあまり写真を撮ることができませんでしたが、ご容赦ください。。

そんなシャイな伝統工芸士さんのお名前は、米沢研吾さん(38歳)。興味津々な我々の熱い視線に晒されながらも、実演しながらたくさん且つ矢継ぎ早の質問に丁寧に答えてくださいました。お写真を撮れなかったので、拙い絵で恐縮ですが似顔絵を描いてみました。こちらの似顔絵でおわかりになる通り、米沢さん、シュッとしたイケメンです。

現在角館樺細工伝統工芸士会には20名の方が伝統工芸士として認定されていらっしゃるそうです。伝承館にあった一覧を見ると、見た目もお若い米沢さんは、やはりその中でも最年少とのこと。20名の中には亡くなられた工人もいらっしゃり、現役で活動されている伝統工芸士さんは11名ほどだそうですが、樺細工の職人さんとしては約90名ほどいらっしゃるそうです。

 

 

肝心の「樺細工」ですが、「樺」と書くので樺の木を使ったものかと思いきや、山桜の皮を職人さんが精魂込めて美しく仕上げた工芸品なのですね。「あ〜、これね、見たことある!」もしくは「持っている!」という方も多いのではないでしょうか。そういえば、私の東京の実家もこのような茶筒にほうじ茶の茶葉を入れて今でもよく使っています。
※写真にある3つの茶筒は、意匠を凝らしたおそらく十数万円するものだと思います。

 

その山桜の皮ですが、山師さんが木の幹から剥いだものをしばらく乾燥させてから使うそうです。磨いていない状態はこんな感じです。これがあんなにツヤツヤになるのだから、本当にすごいことです。まさに職人技。

 

樺細工は「型もの」「木地もの」「たたみもの」と分類され、それぞれとても面白い特色があります。3つに共通するのは、貼り付ける際に使用するのは「膠(にかわ)」だということ。膠って一体何でできているんだっけ?と思い調べてしまいましたが、動物の皮、骨、腱などから抽出したゼラチンを主成分とする物質だそうです。

【型もの】
木型に合わせて芯を作り、その上に樺(山桜の皮)を巻きつけて、熱した金ゴテで押さえながら貼りつけていく工法。古くは印籠などが多く生産され、現在では茶筒が代表的。

 

【木地もの】
下地となる木地に、熱した金ゴテで押さえながら樺や突板を貼りつけていく工法。お盆や箱物などを作る際に使われる技法で、茶筒の写真の一番右の作品に見られるような精巧な模様付けの技術も木地ものの技法。

 

【たたみもの】
磨いた樺を何枚も貼り重ね、厚くしたものを様々な形に彫刻する工法。古くは印籠や胴乱の根付などを作る技法で、現在ではブローチなどのアクセサリーや、上質な茶筒の内蓋のつまみにも用いられている。

 

例えば型ものの技法でできた茶筒は、入れ物部分も蓋部分も内蓋部分も全て同じ円柱からできているため、外気の湿度が変わっても密閉性が高く湿気から茶葉を守るということで、非常に理に適っていますね。現代では、茶筒の円柱部分がアルミやスチールでできているものも多いようですが、やはり呼吸をしない素材なので、内部を適度な湿度に保つということにおいては引けを取るそうです。最近では茶筒で茶葉を保存してお茶を飲む習慣がある若い人はあまりいないかもしれませんが、この程よい密閉性はコーヒー豆の保存にも適しているようで、「コーヒー用」と書いてある製品も見かけました。

 

そして、こちらの写真のように、樺にはちょっと質感が異なる見た目のものもあったので、米沢さんに詳しく伺ってみました。これは何かと言うと、「二度皮(にどがわ)」と呼ぶそうです。山桜の皮を山の中の立ち木から剥いでも、その面積が全体の1/3程度であれば木は枯れることはなく、その剥いだ樹皮は再生し、貴重な「二度皮」として使われるそうです。現在では採取量が検証傾向にあり、益々希少価値が高まっているとのこと。確かに、この二度皮を使用した作品は独特な風合いでとても美しかったです。

 

樺細工の他にも雪国ならではのわらじや草履など、民藝好きにはたまらないものが沢山展示されていて面白かったです。角館にお越しの際は、ぜひ樺細工伝承館へ足を運んでみてください。

 

▼とても素敵な勉強になるウェブサイトがありました▼
角館 伝四郎

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これから東北の「あぁ、良いなぁ」と思えるヒト、モノ、コト、場所を沢山発信していきますので、皆さんに少しでも「あぁ、良いなぁ」とホッコリしていただけたら嬉しいです。

Tohoku Local Walk
ゆるり東北を歩いてみましょう。

 

Credit
写真:Teppei Kobayashi(風景屋)
文章:Eri Kobayashi(風景屋)