暮らしの種まき

#2 十和田湖畔の自然を歩く

Tohoku Local Walk -ゆるり東北-

Report 2:十和田湖畔を山下清吉さんと歩く(2018年4月17日)

こんにちは、風景屋です。
青森県十和田市内にもいよいよ春が到来し、桜が満開の季節となりました。4/17日はまだ桜は咲いていませんでしたが、4/25日に満開の様子が流れてきました。

 

さて、先日道に迷ったりしながら7時間休みなしドライブで、青森県は十和田市にあります十和田湖畔休屋地区へ行ってきました。仙台からだと4時間30もあれば着くのですが、何が起こったのか誰の知る由もありません。到着した時は夕暮れ時の光が湖に差し込み、湖面や外輪山が不思議な光を帯びていました。残念ながら遅刻中のため、その素敵な光景は撮れていません。おそらく、もう雪が溶けてしまっているので、次回この景色と出会えるのは来年だと思います。

十和田湖といえば、おそらく小学生の頃に出てきた地理の教科書で日本の湖の水深第3位という理由で一生懸命覚えたひとつかもしれません。最近では奥入瀬渓流だったり、蔦沼が全国的に有名になり、多くの観光客が十和田八幡平国立公園内に訪れています。春以降のシーズンはもちろん、冬季でもアジアの国から多くの観光客が訪れています。さて、次の日の景色は、うっすら残雪があるものの、春のうららかな陽気に誘われてか春を告げる山菜も数種類ほど顔を出しているのが似合う、穏やかな天気でした。そんな陽気に誘われて後々怖い思いもするのですが、今日の主役である山下清吉さんと湖畔の自然についていろいろな話を聞かせてもらいました。山下さんは自然公園財団の自然公園・自然観察指導員、通称アクティブ・レンジャーをされており、十和田湖畔で30年ほどガイドを務めています。様々な人を案内した経験からか、歩く速度への気配り、洒落を交えた話は非常に楽しく、素敵な時間を過ごさせてもらいました。頻繁に写真を撮っていたのにも関わらず、気にせず撮って良いよ、とも言わない常にこちらを意識してくださる案内に脱帽です。

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今日は、日本で(世界で)唯一無二の湖の、湖畔の自然と修験道散策についてお伝えします。

 

 
休屋地区の始まりは十和田神社から始まります。由来は二つほどありますが、807年からの伝えもあるほど古くから地域の人に愛されている場所で、中世には山伏が修行し、江戸時代には南部藩の霊場となっていた場所です。江戸時代後期の旅行家菅江真澄は以下の様に書き、を描いています。

“中の平というところを分けてゆき、桂平にでた。たいそう丈高い桂が何千本とも数知れず、はるばると遠くまで黄金色に染まり、風も香ぐわしく吹き渡り、はらはらと散りかかる風情はたとえようもない。”

菅江真澄が来たのは、秋の紅葉のシーズンだったんでしょうね。当時は道路もまともになかったことから、奥入瀬とは違う、岩盤の上にある湖畔沿いの植生と景色は特異なものに写ったのだろうと、想像できます。

さて、ここからは山下さんの言葉を借りながら、紹介していきます。今も、休屋湖畔には数多くの雌雄の桂の木が存在します。桂の木は湖畔の風が強く、伏流水も多いであろう場所に存在する力強い木たちです。十和田湖の水は2本の川と20本くらいの沢から流れ込み、奥入瀬渓流と発電所に流れていきます。その量を勘案すると、地下からの浸透水の存在が多くないと賄えるものではないそうです。宇樽部地区には伏流水の湧水が存在しており、その水には「ケイソ」= 二酸化珪素という成分が存在するそうです。地元のお医者さん曰く、宇樽部の高齢の方々の肌艶が、子供の様にあまりにも良く不思議だったそうです。というわけで、美肌になる水を飲みながら、散歩をします。
 

休屋地区の湖畔は伏流水が多く、桂やカエデ、シロヤナギ、泥の木などの水に強い中高木が湖畔に佇んでいます。これらの木は長い時間をかけて循環しています。大きな木は環境に負けて枯れることで、小さな木に光が当たるようになり、小さな木は大きくなっていく。一方で、現在正常に見える樹木のなかにも、折れた場所から腐りが始まり、幹のなかが空洞化し始めている木もあるそうです。そうした木は突然、折れて人に当たる可能性もあるため、管理上は人の手を入れて、小さな木に光が届く様にしても良いかもしれないと話していました。ちなみに空洞化し始めいている木は、張りがなく、ぼこぼこしている傾向にあるそうです。

 

 

写真は人が意図した自然ではなく、循環のなかで生まれた風景です。ちなみに、鳥の巣の様に見えるのは、「ヤドリギ」です。私はずっと「なんの鳥の巣なのだろう」と思っていました。ヤドリギは常緑小低木で漢字で書くと寄生木とも書け、その名の通り、木の養分を吸って、樹上に寄生する草木です。そして、あるときにポタッて落ちてなくなる。ただ、その前にヤドリギの実を食べた鳥さんが、他の木に停まり、糞をする。糞は地面に落ちると「ヤドリギ」は発芽せず、あくまでも木の枝についたものが発芽するそうです。ヤドリギは自分では生きられず、鳥の栄養になりつつ、土を豊かにする。不思議な素敵な生命体ですね。

 

湖畔には、渡り鳥も飛来します。オオバンカイツムリ、カンムリ、キレンジャク、カモ類、、、数えきれないほどの鳥さんたちがやってくるそうです。そうなんです。十和田八幡平には600種類以上の動植物が存在しており、山下さんにとってもいつも出会いの連続だそうです。渡り鳥は冬の10月- 11月にかけて飛んできます。そして、春になると旅立っていきますが、その頃には樹々たちが明るくなっていきます。春もみじと呼ばれる寒い地方ならではの現象がそろそろ見られるそうです。春もみじとは山の木々が一斉に芽吹き始め、色とりどりの葉の色が出てくる状況を表現したもので、その若葉の色には赤や紅色、黄緑、茶緑、萌葱色などがあり、それが次第に淡い緑色、濃い緑色へと変化するそうです。そう一般的には「山笑う」という季語で知られます(知りませんでした)が、青森県や北海道などの寒い地域では、その色づきに時間もかかることから発見されやすいのでしょう。また、それらが終わると日本にあるサクラの原種4系統10種のうち、4種類のサクラが色づき始めるそうです。この時期が終わると、ツツジが咲き始め、、、とまさに自然の宝庫の様です。ちなみに、春の十和田湖畔でのカヌーはこの場所にいる人でさえも言葉で表現できない贅沢だそうです。

 

そんな話をしながら、ある場所にやってきました。高村光太郎が製作した観光名所乙女の像ではなく、修験道・自籠岩への入口です。

 

 

ここを最近、綺麗にしたんです、(私)道?どこ?と思う、道を進んでいきました。

 

 

十和田湖は岩でできた湖と言われる様に、ゴロゴロとした石、岩が湖まで飛び出しています。湖畔に面して、山伏が修行したと思われる岩窟が存在します。そして、ところどころに鳥居と祠が出てきます。祠は漁師さんがしっかり御神酒を奉納していました。山下さんに「まだいく?」っと不思議な声をかけてもらいながら、「行きます、行きます」と進んで行きます。ふと、湖の方を見ると、ところどころで、入江があり、入江に入ると水面が穏やかになり、写真の様に綺麗な湖面が眺められます。

 

 
さて、道を進んでいくと、気がついたら、なんかおかしな状況になっていました。そそり立つ壁を山下さんが登っています。最初の鉄梯子を登っていくと魔除けのシーサーが現れ、本当に行く?気をつけてね、と出迎えてくれます。そして、さらに二つの鉄梯子を登って行きます。最後はほとんど手の力のみで、湖畔を展望できる場所に降り立ちました。そこには石の祠がありました。振り返ると綺麗な景色が見られます。そう、この岩が自籠岩と呼ばれています。十和田湖では神社本殿や占場と並ぶ霊場のひとつです。占場については、また今度、カヌー体験とともにご紹介します。

 

 

登ってよかった、と思える達成感と疲労感と、若干怖いという思いが交錯しつつ、少しばかりぼーっとしてました。先ほどまで散策していた休屋地区が写真左側の屋根のあるところです。なんとなくですが、登ってきた高さがわかると思います。

 

これからのシーズンは熊も出るそうで、訪問する際は必ずガイドと供に行ってみてください。ちなみに、先ほど祠と鳥居が写っていた写真の鳥居の柱は熊に齧られていました。柱が鼠色っぽい色ではなく、はだ色っぽい部分です。ちゃんと、毛もついていました。歩いているときは忘れていましたが、熊さんも冬眠からもう覚めていた様です。昔の人はさらにこの先の、半島の方まで「普通に」歩いていたそうです。地域にとっての「普通」は外からすると「普通」ではないよな、と改めて感じました。

 

歩くのが難しい方はカヌーに乗って、地元の人でも最高の贅沢という「湖面から春紅葉や桜を眺めつつ占場や自籠岩」へ行くのも面白いかもしれません。

 

風景屋では十和田湖畔の風景再生のプロジェクトを始めようとしています。山下さんとは、実生と腐葉土をつくるプロジェクトを始めてみたいと、一方的に考えています。山下さん、土づくりもやられているのです。出来ることから、様々なプロジェクトを立ち上げようとしています。気になる方は連絡頂けると嬉しいです。そして、是非、十和田湖畔に訪れてもらえると嬉しいです。

 

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山下さんと歩きたい方はこちらへ:十和田湖ビジターセンター

 

CREDIT

 

写真:Teppei Kobayashi
文章:Teppei Kobayashi

 

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これから東北の「あぁ、良いなぁ」と思えるヒト、モノ、コト、場所を沢山発信していきますので、
皆さんに少しでも「あぁ、良いなぁ」とホッコリしていただけたら嬉しいです。

 

Tohoku Local Walk
ゆるり東北を歩いてみましょう。

 

 

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